ZEBRA RELAY ESSAY Back Number

ブルー・ジャスミン

アレンの寸止め

 もう、いい歳なのに毎年新作を作り続けている、ウッディ・アレンの精力ぶりには驚くばかりである。もう、びっくりするような傑作ないが、毎年日本で配給されているからには最低限、儲かる映画だということはあるのだろう。
 ストーリーは想像を絶する元セレブの中年女性が落ちぶれて行く話であるが、随所にアレンらしい辛辣なアイロニーとホロ苦さが潜めてある。笑わせすぎて支離滅裂にさせることもなく、深刻にさせすぎて救われない気持ちにさせることもない。それぞれのシチュエーションが度を過ぎる直前に有効な寸止めとなって利いている。さすがの手練手管である。唸ってしまう。
 可笑しいところは、無邪気な二人の甥っ子も含めて、厄介な男連中が何人も登場して、主人公のケイト・ブランシェットの混乱に輪を掛ける。出てくる大人の男たちはつつましくも貪欲な欲望が見え隠れしていて、それが噴き出しかけたり、抑えたりしている様が腹を抱えて笑う。そういう滑稽な男たちは入れ替わり立ち替わりなのでしつこくない。
 一方で主人公は見栄のためには平気で嘘をつく。その突き抜けっぷりに場内は沸く。さらに彼女には妄想癖があり、どこでもついつい一人ごとを言ってしまう。これはともすればゾッとするシーンなのだが、パーティで妄想に耽り、一人ごとを言っていたら周りの人がそれに反応したりして可笑しいのだが、「おそろしおかし」のシーンである。ここでも深刻なままで放っぽらかしにしない。
 主人公の夫のアレックス・ボードウィンはすっかり富裕層の中年男が板に付いてしまったが、結局、派手な金持ちなんて洋の東西を問わず、詐欺師まがいの嘘つきなのだ、という認識である。そんな実体のないヤツらがセレブの正体なんだよと、アレンはそういう部分をシニカルに見抜いているのである。

(新宿ピカデリー他で上映中)  http://blue-jasmine.jp/ 

ぜいたくも 骨の髄まで しみ込めば  見栄にくるしむ こととなり  Y.F.(5/26) 

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