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ウルフ・オブ・ウォールストリート

このボールペンをオレに売ってみろ!

 マーティン・スコセッシとレオナルド・ディカプリオの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を観る。主人公の自伝に沿った実話である。
 株式市場を舞台に、とにかく剥き出しの欲望が噴出している。実際に剥き出しの人が頻繁にでてくる(のでR-18+)。叶えられる環境があれば、欲望など際限なく湧き起こる。こんなことは正常でないとか、因果は応報するのだ、ということは些かの人生経験があればわかることだと思うのだが。良いときの後は悪いときで、悪いときの後は良いときだ、ということを高校生の時にボブ・ディランにおしえてもらっておいて良かった。
 また、アメリカであんなにコカインやドラッグが一般化しているシーンがでてくる(のでR-18+)というのは改めて驚いた。俳優のフィリップ・シーモア・ホフマンの先日の事故もそうだが、普通のビジネスマンが屈託なく使用しているのか。こんなラリったウォール街の利己主義者たちに大切な市場が翻弄されているかと思うとやるせない。劇中にも出てくるが、彼らからすれば一般投資家などは"クソ野郎"扱いで中指を立てられている存在なのである。モラルがない。
 一方で、FBIの捜査官役は任務に忠実だが、ややくたびれたような陰のある風貌である。公務員としてこうした浮ついたセレブリティばかりを見ていると鬱屈するのかもしれない。しかし彼が正義を守ろうとしているので、なんとかアメリカという社会への最低限の信頼は担保できる。ラストの地下鉄のシーンでは、米国がひどい格差社会なのだという現実を捜査官が疲れた顔つきの目で眺めている。
 マーティン・スコセッシの演出で登場人物たちは軽快に違法スレスレのことをやる。彼らには悲愴感も罪悪感もない。それはそもそも資本主義の前提となる貨幣経済というものが大いなるフィクションだと嗅覚的に見越しているからかも知れない。
 実話に基づいた、成り上がりから絶頂、そして転落のジェットコースター映画。全編通して破廉恥であるが、テンポもよく陰鬱でもないので、不思議と爽快感が残る。
 ボールペンの売り方は誰かに試してみたい。
(新宿ピカデリー他で公開中) http://www.wolfofwallstreet.jp/

ウルフとて 足るを知らざば 塀の内  Y.F.(2/17)

 

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