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ルパン三世

話題の『ルパン三世』を観た。実写版があたるのか疑問だったが、今夏の大ヒットとなった。
日本オリジナルの劇画・コミックで、欧米でも通用しそうな、大人の鑑賞に堪えるアクション作品は限られているだろう。どれも60年代末から70年代のものだけれど、時代劇を除いて、『ワイルド7』、『宇宙戦艦ヤマト』や『ゴルゴ13』あたり。どれも無造作に実写化してみんな討ち死にである。もう残る最後のコンテンツは『ルパン三世』ぐらいしかないな、と思っていた。その実写化である。

ここでは今回の『ルパン三世』のキャスティングについて個人的に考察してみる。
まず、ルパン三世。小栗旬は一生懸命にルパンになろうとしていたが、やはり違和感がぬぐえない。ときどき痩せた中山秀征にみえてしまう。もともとは『勝手にしやがれ』や『リオの男』のジャン・ポール・ベルモンドに見立ててるのだから、どうやったってベルモンド以外は無理なのである。ああいう軽薄なピラピラ感が少ない。日本人でそれが出来たのは青大将やっていた頃の田中邦衛かもしれない。
次元大介はこれも、声優のイメージもあるかもしれないが、ジェームス・コバーンなのだろうと思う。玉山鉄二もひどくはなかったが、松重豊なんかがやったら面白かった。
石川五ヱ衛門は綾野剛だったが、もうちょっと顔が長細い方がより似てるかもしれない。加瀬亮とか長谷川博巳とか。
峰不二子の黒木メイサはないなぁ。美しさと甘さとずるがしこさが必要なのだ。これももともとは『黄金の七人』のロッサナ・ポデスタなのだから、あんな豹のような切れ長で隙のない目じゃダメなんだ。昔から不二子を演じるとしたら70年代までの小川真由美だろうなと思っていた。女ねずみ小僧もやっていたし、まんざら泥棒と縁がないようでもないし。今だったらゴージャス感ということでは藤原紀香でもいいのかな、と思ったりする。
銭形警部は阿部寛のほうが嵌る気がする。あるいは杉本哲太も悪くないだろう。

モンキー・パンチの『ルパン三世』は小道具を含めて60年代、70年代の世界の映画の引用があちこちに散りばめられている。そこをくすぐってくれたらおじさん世代も唸らせたのになぁ。それと映画のなかで彼らの超人的な技使いをもっと強調してほしかった。それによって、こうした個性的な面々のキャラクターが粒だってくるのに。
いいな、と思ったところは布袋寅泰の音楽だ。クラブ風のビートが何とか映画を見続けるモチベーションを保ってくれた。
ヒットしたとは言うものの、エンドロールが終わる前に席を立つ人がかなり目立ったし、帰り際に「なんだかなー」とか言いながら曖昧に笑っているひとが多かった。

(TOHOシネマズ六本木他で上映中 http://www.lupin-the-movie.jp/)

さて一年間、日本映画興行振興協議会による映画紹介をしてきましたが、今月で終了です。一年間お付き合いくださいましてありがとうございました。  Y.F.(9/29)


 

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