インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌
Twisting around the cat.
'60年代初頭、ボブ・ディラン前夜のNYフォークシーンを扱っているので、観ないわけにはいかなかった。ニュー・ヨークの、それもグリニッヂ・ヴィレッジの空気が見事に再現されいていて堪らない。どのシーンもディランの"風に吹かれて"のジャケットのようである。主人公のルーウィンを贔屓にしている大学教授の家に様々な民族をルーツにもつインテリが集まってくるところにボヘミアンな空気が凝縮されている。
主人公は実在したデイヴ・ヴァン・ロンクをモデルにしている。夢を諦めきれない男が夢の実現のためにあがくが、何をやっても裏目、裏目に出てしまう。裏切りやショービジネスのエグさにも翻弄される。中盤で主人公の浮草のような生き様の理由が分かってくる。フォーク・デュオを組んでいた相棒が飛び降り自殺をしたことを引き摺っている。その出来事もジョン・グッドマン演じる怪人に"飛び降りるんだったら、ジョージ・ワシントン橋じゃなくてブルックリン橋にするんだったな"とジョークにされてしまう始末。これでは救われない。
こうした緊張感を和らげてくれるのが「猫」だ。ニュー・ヨークの猫といえば『ティファニーで朝食を』か。だが、この猫に振り回される主人公の姿は人生に振り回される主人公の人生そのままである。その猫を怪人とともにハイウェイに置き去りにするのは、ままならない人生との訣別を意味するのか。
ピーター、ポール&マリーをはじめとする、フォークシンガー、グループをイメージさせるアーティストたちが出てくるのも楽しい。最後の最後に"ボブ・ディラン"がするっと出てくる演出がニクい。
制作したコーエン兄弟は骨太のずっしりと見応えのある作品を作る。この兄弟の名前はもはや作品の品質保証になっている。
(TOHOシネマズシャンテ他で上映中) http://www.insidellewyndavis.jp/
風吹かず きまぐれ猫に ふりまわされ Y.F.(6/30)
※ゼブラグッズ第一弾 販売開始!
各クラブ共通で使えるグッズをこのたび作製しました。クラブライフがより楽しくなるように考えて作りました。お買い求めの際はスタッフにお声がけ下さい。